ソリューション ファインダー 技術サポート

EV には 800 V が必要、800 V にはシリコン カーバイドが必要

EV Charging

800 V の電気自動車 (EV) が登場し、その数は増え続けています。800 V システムは、ポルシェ タイカンやアウディ e-Tron GT などの高級 EV で始まり、その後ヒョンデ Ioniq5 や起亜 EV6 で主流となりました。ゼネラル モーターズとリヴィアンは、将来の EV を 800 V 対応にすると発表しています。[1] 他の企業もこれに続くと予想されています。

現在の 400 V ドライブ トレインの 2 倍に相当する 800 V の使用が可能になれば、大きな可能性がもたらされます。電圧が 2 倍になれば、充電時間を半分に短縮することができます。ヒョンデ Ioniq5 と起亜 EV6 は、200 kW を高速充電でき、10% から 80% までの充電を 18 分で行うことができます。ポルシェ タイカンは、5% から 80% まで 22.5 分で充電することができます。400 V で 100 kW に対応する充電ケーブルやコネクターは、800 V で 200 kW の出力が可能です。800 V 単体ではドライブ レンジが飛躍的に伸びるわけではありませんが、充電時間を大幅に短縮できるため、航続距離への不安が軽減されます。

また、電圧が 2 倍になると、同じ電力レベルであれば電流も半分になり、ケーブルのサイズと重量を減らすことができるため、EV が軽量化されます。低電流化により発熱を抑え、環境に優しい EV を実現します。高電圧化と巻線の小型化により、高電力密度で高効率のトラクション モーターを設計することができます。[2]

800 V EV にはシリコン カーバイド電力コンバータが必要

シリコン カーバイド (SiC) は、シリコン製のパワー MOSFET や IGBT に比べ、より高い性能を発揮することができます。SiC のバンドギャップが 3.26 eV であるのに対し、シリコンは約 1.12 eV であるため、SiC デバイスの高温でのリーク電流は小さくなります。

SiC はシリコン (0.3 MV/cm) に比べ、破壊臨界電界電圧が 2.8 MV/cm と高く、オン抵抗を大幅に低減させることができます。高ブレークダウン フィールドにより、SiC デバイスはシリコン デバイスよりも薄くなり、スイッチング損失の低減、通電能力の向上、高速スイッチングが可能になります。その結果、SiC MOSFET はシリコン MOSFET のような高周波スイッチングに対応しながら、IGBT に近い電流、電圧定格を実現し、EV 用電力コンバータとして非常にマッチしています。

SiC を用いた高周波スイッチングは、スイッチング速度の遅い IGBT を用いた設計と比較して、電力コンバータの大幅な小型化を実現します。

熱伝導率も、シリコンと比較して SiC が優れている部分です。SiC は熱伝導率が高いため、同じ消費電力であれば接合部温度 (Tj) の上昇が小さくなります。また、SiC MOSFET はシリコン デバイスよりも高いジャンクション温度を扱うことができます。SiC デバイスは 600℃ の最大ジャンクション温度 (Tj(max)) に耐えることができますが、市販のデバイスはパッケージの関係で 175 ~ 200℃ に制限されています。一方、シリコン デバイスは Tj(max) が 150˚C であるため、冷却の必要性が高まり、ソリューションのサイズが大きくなります。

800 V EV には SiC ベースの補助 DC-DC が必要

トラクション電源バスが 800 V になっても、EV の補助電源バスは DC 24 V または DC 48 V のままと予想されます。EV には、800 V から 24 V または 48 V の DC-DC コンバータを実装するための高集積、軽量、高効率の技術が必要です。

補助電源の設計者は、高電圧、AEC Q100 認定電源 IC である InnoSwitch3-AQ ファミリーを利用することができます。これらの IC は、1700 V の SiC MOSFET を内蔵し、絶縁が強化されています。部品点数を最大 50% 削減し、小型化と軽量化を実現しています。

これらの電源 IC は、全負荷範囲において最大 90% の効率を実現しています。無負荷時の消費電力は 15 mW 以下で、電気自動車のバッテリー マネージメント システムにおける自己放電を低減します。また、製造、組立、テスト サイトは、IATF16949 認定の自動車品質マネジメント システムを採用しています。

資料

[1] https://www.greencars.com/post/new-800-volt-fast-charging-systems

[2] http://drivemode-h2020.eu/shifting-to-800-volt-systems-why-boosting-motor-power-could-be-the-key-to-better-electric-cars/

関連する投稿

E-Mobility Devices and Charging Safety in Domestic Applications
電気自動車

家庭での電動モビリティ機器の充電安全性

米国のアンダーライターズラボラトリー(UL)認証は、電動スクーターや電動自転車の充電においてますます重要になっています。政府機関は、電動モビリティ機器の充電安全性を高めるために、UL認証製品の必要性を強調しています。
Curbside EV Charging
電気自動車

街灯充電:都市部のEVインフラのソリューション

2016年、ロンドンはケンジントンとチェルシーで街灯をEV充電ステーションに変えるプロジェクトを試行しました。これには、電力ネットワークを妨げることなく安全に電力を供給するためのヒューズのアップグレードが含まれています。変換プロセスは迅速で、街灯1本あたり1〜2時間しかかからず、インフラ変更は最小限に抑えられ、目立たない充電ソケットと標識だけが残ります。
Charging EVs
電気自動車

未来への突進:ヨーロッパとアメリカが電気自動車インフラの構築で競争

電気自動車(EV)への世界的な移行が加速しており、政府のインセンティブと環境に優しい代替手段への必要性がその道を開いています。この移行は、頑丈でアクセス可能な充電インフラに大きく依存しています。アメリカとヨーロッパにおけるEV市場と充電インフラの進化を、もう少し詳しく見てみましょう。